齊藤彩 画家|インタビュー
まっすぐに描いた、嘘のない絵を見て欲しい
一年前の第25回グラフィックアート『ひとつぼ展』では、一枚の大きな抽象画で審査会に臨んだ齊藤彩さんが満票を獲得し、見事グランプリとなりました。「ここまで心象的な表現をグラフィック作品として考えていいものなのか」という議論もありましたが、審査員のタナカノリユキさんは「絵をかくのに大切なものを持っている」と絶賛するなど、他の審査員の方々も作品そのものを高く評価しました。 毎日1枚以上絵を描いているという齊藤さん。今回の個展ではどんな作品を見せてくれるのでしょうか。「普段からしゃべるのはあまり得意ではないんです」と、言葉を選びながらゆっくり語ってくれました。
ずっと絵を描くのが好きだった
子供のころから絵が好きで、小学校1〜5年生まではお絵描き教室に通っていました。両親も絵が好きで、よく美術館に連れていってもらっていましたね。家族で行ってもそれぞれのペースがあってみんなバラバラに観てました。昔からピカソとゴッホが好きで、今もそれは変わらないです。高校3年生のときに美大に進もうと、予備校に通ってデッサンを始めたら、先生に「絶対受からないよ」って言われたくらい下手だったんです。でも運良く女子美の洋画に入れました。
自分なりのスタイルを追求
大学に入って周りが皆上手くてびっくりしました。でも、絵の上手い人、テクニックのある人はたくさんいるので、自分は何も上手く描く必要はないと思いました。この頃から自分なりのスタイルを追求するようになって、3年生で課題がなくなると毎日自由に描くようになりました。ヘルメットや木の板、広告の裏とかその辺りに落ちているものに描いたり、50cmくらいの小さいサイズの絵を一日7枚くらい描いている時期もありました。その後フォイル・アワードで奈良美智さんに「大きさや素材、色彩や題材、等もっと色々なものにチャレンジしてみれば」というアドバイスをもらいました。『ひとつぼ展』でも審査員のタナカノリユキさんに親身になっていろんな助言をしていただいて、現在の作品へと変化してきました。
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描くことが中心の生活
今も毎日描いています。仕事から帰って毎日12時くらいまで。どうしても気になったら、朝早起きして描き足したりもしています。下書きもしないで、真っ白な紙に向かって、まず形から描き始めます。描きながらいろんなことが浮かんでくるんです。でも気づくと、顔の形や、緑や赤が多くなっていたりする。休日もずっと描いていますね。本当に絵が生活の中心なんです。何故だかわからないけど、描かないと自分がダメになっちゃいそうで……。楽しいわけでもない、辛いわけでもない。でもその答えが出たら絵は描かないと思う。それだけは確かです。
普遍性の追求
個展のタイトル「ゼロ」は言葉では言い表せない、私の作品を示しています。自分の作品は、言葉の世界からは離れたもので、説明してはいけないような気がしてるんです。説明すればするほど、嘘になっていく感じがして。時代や言葉を超えた普遍的な作品が創れればいいなあと思って、毎日描いています。個展を1ヶ月前に控えて、仕事も辞めました。中途半端な気持ちでやりたくないんです。個展ではただまっすぐに描いたところ、嘘のないところを観て欲しいと思っています。
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1981年生まれ
2003年女子美術大学洋画専攻卒業
[受賞歴]
2003年 GEISAIミュージアム 北原照久賞
2004年 GEISAI 奈良美智賞/第一回フォイル・アワード グランプリ
2005年 第25回グラフィックアート『ひとつぼ展』グランプリ
[展示]
2003年 「ARTISTS BY ARTISTS」展(六本木ヒルズ森アーツセンター内ギャラリー1)
2005年 「だるまさんがころんだ」展(リトルモアギャラリー)/「群馬青年ビエンナーレ'05」展(群馬県立現代美術館)/「Ten Colors展」(女子美アートミュージアム)
2005年 作品集「だるまさんがころんだ」リトル・モア出版
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